独り言、移動する人々の思想 |
お前はまだお前を泣かせたり、怒らせたりする相手にうんと愛着を持っている。
・・・愛着があるからこそ憤り、彼らから良いことを期待するのだ。
・・・ジプシーにとって人生とは果てしのない水の流れであり、
形を定めず、ゴールもなく、清濁あわせのむ急流のようなもので、
その中で人が占める位置とは倦怠と疑惑という
あまりに人間的な弱みを許さずに、
たえず自己をかたちづくる作業のようなものである。
人生における根本的なるものを求める飽くなき衝動があるかぎり、
人はそのさまざまな試練に自分のやり方で立ち向かい、
自分でなれるものになることは自由だ。
これこそ自由というものだ。
阿部謹也『中世を旅する人々』 平凡社 pp.172.
(写真:「ファルークという名の少年」11月6日カンパラ郊外にて撮影)